私自身が表題の問題を解いた時のプログラムについて解説します。
問題の詳細は「突進するイノシシ」(CodeIQ)を参照してください。
「猪突猛進」という言葉があるように、イノシシはまっすぐに突き進むことで有名です。
図のようなマス目があったとします。
イノシシは進む方向を決めると、その方向に向かって壁や障害物に当たるまで突き進みます。
壁や障害物に到達すると、左右どちらかに向きを変えて、突き進むことを繰り返します。
このことを繰り返しながら、最短距離で餌にたどり着くまでの経路を考えます。
このとき、壁や障害物に当たった回数を数えます。
周囲を壁に囲まれた中で、次の図のようにイノシシと餌が位置しているとき、右の図のように移動すると最短距離で餌にありつけます。
この場合は3回になります。
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標準入力から障害物の位置が与えられたとき、イノシシと餌を障害物以外の位置に適当に配置し、餌にたどり着くまでの経路を考えます。
(イノシシが餌に到達できない場合は、壁や障害物に当たる回数は0回とします。)
壁や障害物に当たる回数が最大になるような配置を考え、その回数を答えてください。
上記の図の場合、標準入力から以下のように与えられます。
一行目にはマスのサイズ n が与えられ、n × n のマス目について、二行目以降に、障害物の位置が「X」、障害物がない位置が「O」で与えられます。
【入出力サンプル】
標準入力
5
OOXOO
XOOOO
OOOOO
OOOOO
XOXXO
標準出力
6
Rubyで解答しています。
#!/usr/bin/ruby # 入力値からのマップ # 周囲は全てXで埋める $BaseMap = [] # 入力値の1行め $N=0 # マップ # 進行可能な方向をビットで表す。 # 0b0000:X # 0b0001:上、0b0010:下、0b0100:右、0b1000:左 $Map = [] # ゴールに到達したパターン $Goals = [] # $Mapを作る def makeMap() for i in 0...$BaseMap.length $Map.push([]) for j in 0...$BaseMap[i].length c = $BaseMap[i][j] if c == "X" then $Map[i].push(0) else v = 0 if $BaseMap[i-1][j] == "O" then v |= 0b0001 end # 上 if $BaseMap[i+1][j] == "O" then v |= 0b0010 end # 下 if $BaseMap[i][j-1] == "O" then v |= 0b0100 end # 左 if $BaseMap[i][j+1] == "O" then v |= 0b1000 end # 右 $Map[i].push(v) end end end end class Pos def initialize(y=-1, x=-1, d=0, path=nil, turn=0) @x = x # X座標 @y = y # Y座標 @d = d # 次の進行方向 @turn = turn # 方向転換回数 if path == nil then @path = [100*y+10*x+d] else @path = path.dup.push(100*y+10*x+d) end end # 異動先のPosオブジェクトのリストを返す。 # @param gl ゴール座標 # @return 異動先のPosオブジェクトのリスト def getNexts(gl) nxts = [] # 次の位置に進む ny = -1; nx = -1 if @d == 0b0001 then ny = @y-1; nx = @x end if @d == 0b0010 then ny = @y+1; nx = @x end if @d == 0b0100 then ny = @y; nx = @x-1 end if @d == 0b1000 then ny = @y; nx = @x+1 end # 次の場所で進行可能な方向 nd = $Map[ny][nx] # puts "(ny, nx)=" + [ny,nx].to_s + ", nd=" + nd.to_s + ", @d=" + @d.to_s #DEBUG # ゴールに達した場合 if [ny, nx] == gl then nxts.push(self.moveNewPos(ny, nx, 0)) # p "Goal!!" #DEBUG # 次に同じ方向に進める場合 elsif (@d &apm; nd) != 0 then nxts.push(self.moveNewPos(ny, nx, @d)) # p "Go Straight" #DEBUG else # 現在上下方向に移動 if (@d & 0b0011) != 0 then # 次は左右のどちらかに移動する if (nd & 0b0100) != 0 then nxts.push(getNewPos(ny, nx, 0b0100, 1)) end if (nd & 0b1000) != 0 then nxts.push(getNewPos(ny, nx, 0b1000, 1)) end # p "Turn LR" #DEBUG # 現在左右に移動 elsif (@d & 0b1100) != 0 then # 次は上下のどちらかに移動する if (nd & 0b0001) != 0 then nxts.push(getNewPos(ny, nx, 0b0001, 1)) end if (nd & 0b0010) != 0 then nxts.push(getNewPos(ny, nx, 0b0010, 1)) end # p "Turn UD" #DEBUG end end # p nxts #DUBUG return nxts.compact end # 現在ゴールにいる場合はtrue、そうでない場合はfalseを返す def isGoal(gl) if @y == gl[0] && @x == gl[1] then return true else return false end end # 次の場所を新規に作成する # 方向転換が発生した時は2以上の方向に進める可能性があるのでこのメソッドで新たにオブジェクト # を作る # @param ny 次のy座標 # @param nx 次のx座標 # @param nd 次の方向 # @param turn 方向転換回数に加える数(1か0) # @return 次のPosオブジェクト。同じ場所の繰り返しを検出した場合はnil。 def getNewPos(ny, nx, nd, turn) if @path.include?(100*ny+10*nx+nd) then return nil else return Pos.new(ny, nx, nd, @path, @turn + turn) end end # 現在の位置から次の位置に移動する # 直進の場合、2つ以上の進行方向の候補ができることはないのでこのメソッドでオブジェクトを更新 # する # @param ny 次のy座標 # @param nx 次のx座標 # @param nd 次の方向 # @return レシーバ自身 def moveNewPos(ny, nx, nd) self.y = ny self.x = nx self.d = nd self.path.push(100*ny+10*nx+nd) return self end attr_accessor :x, :y, :d, :path, :turn end # イノシシに探索させる # @param st スタート座標 # @param gl ゴール座標 def goBoar(st, gl) queue = [] # 探索用キュー # 初期状態を作る # 初期状態ではそのマスから進行可能な方向を全てスタックに積む for d in [0b0001, 0b0010, 0b0100, 0b1000] nd = $Map[st[0]][st[1]] if (nd & d) != 0 then queue.push(Pos.new(st[0], st[1], nd & d)) end end nqueue = [] # キュー更新用 goal = nil # ゴールに達したもの while !queue.empty? now = queue.shift # ゴールに到達している場合 if now.isGoal(gl) then if goal == nil then goal = now elsif goal.turn > now.turn then goal = now end end # 次の場所に移動する nqueue += now.getNexts(gl) # まだ現在の距離の探索がキューに残っている間はそれを続ける if queue.empty? then # ゴールに達したものがない場合はキューを更新 if goal == nil then queue = nqueue nqueue = [] else $Goals.push(goal) break end end end end # ターン数の最大値を求める def getMaxTurn() mx = 0 if $Goals.empty? then return 0 end for g in $Goals if g.turn > mx then mx = g.turn # p g #DEBUG end end return mx; end #============================================================================== # main #------------------------------------------------------------------------------ ln = 0 while line = gets line.strip! if line.empty? then next end if ln == 0 then $N = line.to_i $BaseMap.push("X"*($N+2)) else $BaseMap.push("X" + line + "X") end ln += 1 end $BaseMap.push("X"*($N+2)) makeMap() # 全てのスタート地点、ゴール地点についてテストする for sy in 1..$N for sx in 1..$N for gy in 1..$N for gx in 1..$N if $BaseMap[sy][sx] == "X" then next end if (sx == gx) && (sy == gy) then next end goBoar([sy,sx],[gy,gx]) end end end end p getMaxTurn()
この問題は出題内容に曖昧な部分があります。実際のテストケースの中に「ある点の組み合わせで同じマス数(最短距離)だがターン数が3の場合と4の場合が存在する」のですが、この時に答えとしては3を選択しなければなりません。
問題の最短距離がターン数だとすると「ある点の組み合わせでマス数は多いけれどターン数はより少なくなる」場合がありそうです(これは確認していません)。
この回答は結果に合わせる形で「ある一組のスタート地点とゴール地点の組み合わせで同じマス数(距離)で異なるターン数の結果が得られた場合、ターン数の少ない方を最短距離とする」としています。
基本的な考え方には悩むところはあまりありません。
一組のスタート地点からゴール地点への最短距離の探索は「幅優先探索」です。普通と違うのはターン数をカウントする必要があることだけです。そして、幅優先探索をすべての地点の組み合わせに対して行い、ターン数が多いものを選べば良いだけです。
ただし、気になるのは計算量です。きちんと見積もってはいませんが相当多そうな感じがするので工夫が必要と思います。
大域変数$BaseMapは入力値をそのまま保持しています。
それを元にmakeMap()で実際に使用する地図を作成しますが、ここで少し工夫しています。
makeMap()で$Mapに実際に使用する地図にするのですが、この時マスごとに進行可能な方向をビットスイッチで記録しています。0b0001:上、0b0010:下、0b0100:右、0b1000:左に進行可能で0なら入れないマスを表します。
こうすることで実際に入れないマスに進んでから入れなかったと判断するよりも計算量が減ります。
イノシシの位置と移動を管理するクラスです。
メンバ変数が座標(x,y)と進行方向(d)、方向転換の回数(turn)、移動経路(path)です。この問題では移動経路上同じマスを通っても問題ないのですが、それを認めると同じ場所を回り続けるということが起こります。それを防ぐために経路を記録します。この値は少し工夫していて100の位がy座標、10の位がx座標、1の位が方向を表すようにしています。こうすることで経路情報が1つの数値で表すことができメモリの節約になるとともに比較が単純になるので高速化にも寄与します。
イノシシを1マス進めるのがgetNexts()です。
基本的には現在のオブジェクトの位置情報を更新するのですがゴールに着いた時は方向を0にします。ゴール到着の判断が楽になると思ってこうしたのですが、実際のコードでは使っていません。
それよりも重要なのはターンする場合、最大2方向に移動できるようになるので現在のオブジェクトを更新してはいけないということです。なのでこの場合、現在の情報と同じ情報を持ったオブジェクトを新たに作成して方向転換の処理を行い、新たなオブジェクトを返します。最大2つのオブジェクトになるのでこの関数の戻り値は配列になります。
getNexts()内で現在のオブジェクトの位置情報を更新するのでmoveNewPos()で新たなオブジェクトを作って返すのがgetNewPos()です。
goBoar()関数がイノシシに幅優先探索させる関数で、処理の本体と言えます。幅優先探索は何回か説明しているので詳しくやりませんが、キューとループを使った方法にしています。
イノシシは開始点から任意の方向に進めるのでキューの初期値は最大4方向になります(143〜148行目)。コメントが間違っていて「スタック」と書いていますが、最初問題を読み間違っていて深さ優先探索の方が効率が良いのでは? と思ってコードを書き始めたのでスタックだったのですが、やはり幅優先探索だということで修正した時に直し忘れました。
イノシシがゴールに着いたら探索をやめます(最初にゴールにたどり着いた時が基本的に最短系路)ですが、同一回数で2回以上ゴールにたどり着くパターンもあり得るのでそれを考慮します。それが168〜177行目の処理で、同一マス数の処理が終わるまでキューを追加せず、キューに追加するのはゴールにたどり着いていない場合とすることでこの条件を考慮しています。
後、最初に書いた問題の曖昧さに対する対処が159行目の条件で同一マス数でゴールに達した時はターン数の少ない方を最短距離としています。
mainの217〜227でスタート地点とゴール地点を総当たりします。
地図のXの位置はスタート地点にならないので無視、スタートとゴールが重なっている場合はターン数0で答えになりえないので無視します。
goBoar()関数でゴールに達した場合のPosインスタンスを$Goalsにとっています。なので$Goalsの要素のturnの中で最大値を求めれば答えになりますので、それをgetMaxTurn()で行います。
★★★の問題で相応に難しいと思いますが、「激ムズ!頭脳を【上限解放】~電脳体キュラゲタムを討伐せよ」と似た問題だったのでそれほど悩まずにできました(それでも1回時間切れ、1回は問題の曖昧さのためリジェクトされましたが)。